「NISAもiDeCoも聞いたことはあるけれど、結局どっちを先に始めればいいのか分からない」。投資を始めたばかりの会社員から、こういう相談をよく受けます。
どちらも税制優遇があるという情報だけが先に入ってきて、制度としての中身の違いまでは理解できないまま、なんとなく後回しにしている人も多いと思います。この記事では、NISAとiDeCoそれぞれの制度としての違いを整理した上で、会社員が判断に使える軸を年代・企業年金の有無から考えます。
【結論】
- 原則はNISAから。ただし年代・勤務先の企業年金の有無によって優先順位は変わる
- NISAとiDeCoはどちらも「制度」。比較すべきは商品ではなく、引き出し制限・掛金上限・税制優遇の種類といった制度の仕組み
- iDeCoの掛金上限は勤務先の企業年金の有無で変わるため、詳細は勤務先の担当窓口や制度資料で確認する
NISAとiDeCo、それぞれ何の「制度」か
NISAとiDeCo、どちらも「非課税」という言葉がセットで語られますが、制度の目的も仕組みも別物です。

NISAもiDeCoも非課税って聞くけど、同じものなんですか?

似ているようで、役割は違います。NISAは、投資で得た利益を非課税にできる制度です。この制度の中で、投資信託や個別株といった商品を選んで運用します。一方iDeCoは、私的年金を作るための制度です。掛金が所得控除の対象になる、運用益が非課税になる、受け取るときにも税制優遇があるという、3段階の優遇がある点が特徴です。

非課税ってひとことでも、中身は結構違うんですね。

そうなんです。NISAは「利益を非課税にする制度」、iDeCoは「老後資金作りを税制面で後押しする制度」という違いがあります。この目的の違いが、次に説明する引き出し制限や掛金上限の差にもつながっています。
NISAとiDeCo、共通点と違い
共通点は、どちらも運用で得た利益が非課税になるという点です。ここは同じです。
一方で、使い勝手の面では違いがはっきりしています。
| 項目 | NISA | iDeCo |
|---|---|---|
| 目的 | 資産形成全般の非課税運用 | 私的年金(老後資金)の形成 |
| 引き出し | いつでも引き出し可能 | 原則60歳まで引き出せない |
| 投資枠・掛金上限 | 年間最大360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円) | 職業・企業年金の有無により月額上限が異なる |
| 税制優遇 | 運用益が非課税 | 掛金の所得控除+運用益非課税+受取時の税制優遇 |
iDeCoの掛金上限は、勤務先に企業年金があるかどうかで変わります。この上限額については、年代別の投資額を整理した以下の記事でも触れています。
引き出しの自由度は、NISAとiDeCoを比較するときに最も分かりやすい違いです。NISAはいつでも売却して現金化できますが、iDeCoは原則として60歳になるまで引き出せません。この違いが、次の判断基準に直結します。
会社員が判断すべき軸
差が出やすいのは、年代と勤務先の企業年金の有無です。

うちの会社に企業年金があるかどうかって、そんなに影響するんですか?

影響します。iDeCoの掛金上限や、場合によっては加入できるかどうかの条件自体が、企業型DCなどの企業年金の有無によって変わります。細かい金額は制度改正で変わることもあるため、正確な数字は勤務先の担当窓口や制度資料で確認してください。

じゃあ、自分の場合はどう確認すればいいんでしょうか。

勤務先の担当窓口や制度資料を確認するのが確実です。企業型DCへの加入状況や、iDeCoとの併用可否は会社によって規定が異なります。
年代による違いもあります。20代独身の会社員は、結婚・住宅購入といった大きな支出がこの先に控えていることが多く、資金の流動性(必要なときに引き出せること)を重視しやすい時期です。30〜40代の子育て世帯は、教育費や住宅ローンの支払いが重なり、急な出費に備えたい場面が増えます。どちらの年代でも、いつでも引き出せるNISAの方が、生活の変化に対応しやすい面があります。
会社員はどっちから始めるべきか
これは持論ですが、会社員の時間的制約(投資判断にかけられる時間が限られる)と金額的制約(投資に回せる金額に上限がある)を踏まえると、次のような優先順位になると考えています。
まずはNISAから始めるのが現実的です。理由は主に2つあります。ひとつは、いつでも引き出せるため、ライフイベントの多い会社員にとって資金の使い道を柔軟に保てること。もうひとつは、iDeCoより制度がシンプルで、始めるハードルが低いことです。
そのうえで、生活防衛資金の確保とNISAでの積立が安定してきた段階で、iDeCoを検討するという順序を勧めています。iDeCoは60歳まで引き出せない分、老後資金という目的がはっきりしている人には向いていますが、当面の資金にも余裕を持たせたい会社員には、まずNISAという順番が合いやすいと感じています。
これはあくまで一つの考え方です。すでに老後資金の目的がはっきりしていて、かつ勤務先に企業年金がない場合は、iDeCoを先に検討する選択肢もあります。企業年金がない会社員はiDeCoの掛金上限が比較的高くなるため、所得控除のメリットも大きくなりやすいからです。
少額から始める場合の考え方
NISAもiDeCoも、いきなり大きな金額で始める必要はありません。まずは無理のない金額でNISAの積立から始めてみるのが現実的です。月1万円という具体的な金額での始め方は、こちらの記事にまとめています。
口座開設や積立設定の手続き自体も、思っているより手軽です。スマホと昼休みのスキマ時間だけで手続きが完結する方法は、こちらの記事で紹介しています。
始めたあとの続け方
NISAを始めたあとは、日々の値動きに合わせて売買を繰り返すよりも、仕組み化してしまう方が会社員には向いています。積立設定を済ませたあとの続け方は、こちらの記事で整理しています。
制度の話はここまでです。ここから先、NISAの中で投資信託を選ぶか個別株を選ぶかは、制度の話ではなく商品選びの話になります。商品ごとの特徴や、会社員の制約を踏まえた優先順位については、こちらの記事で書きました。
【まとめ】
NISAとiDeCoは、どちらも非課税という共通点を持ちながら、引き出し制限・掛金上限・税制優遇の種類が異なる別の制度です。原則はNISAから始めるのが現実的ですが、年代や勤務先の企業年金の有無によって、優先順位は変わります。
今日からできることとして、まずはNISA口座の開設状況を確認し、開設していなければ手続きから始めてみてください。すでにNISAを利用している人は、この機会に勤務先の企業年金の有無を担当窓口や制度資料で確認し、iDeCoを検討するタイミングかどうかを考えてみるとよいと思います。

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